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谷茶前(琉球舞踊)      
 「谷茶前」といえば、『谷茶前節』と『伊計離り節』で踊られるわけですが、順序が逆のもありますね。私は、ずっと『谷茶前節』が先だと信じていました。
 思えば、不思議な組み合わせです。谷茶は、西海岸。伊計は東ですよね。そこは舞踊に都合のよい曲を合わせたということでしょう。

 芭蕉布の衣装、エーク=櫂(かい)とバーキ=ザルをもって踊られる男女の「打組踊り」です。歌詞の意味はわからなくても、なんとなく海の話だということがわかりますよね。
 私が見た踊り手はすばらしい笑顔で踊っていました。雑踊りの一つですから、笑顔で踊っても問題ないと思うのですが、案外笑顔で踊る雑踊りは少ないように思います。「谷茶前」も、すべての人が笑顔で踊るとは限らないでしょうね。もっと笑って欲しいものです。
 琉舞の発表会では、小さな子どもが踊っていることもあります。舞踊研究所では、初心者にも教えているのではないでしょうか。それくらい県内ではよく知られた踊りです。

 40歳以上の県外出身のみなさん。子どものころ、テレビのコマーシャルで『谷茶前節』が流れていませんでしたか?私は、『ハイサイおじさん』よりも前に『谷茶前節』を聞いたことがある。と記憶しているのですが、間違ってます?
 それと、糸満の漁師さんの家庭では「夫婦別会計」という説明の入ったコマーシャルもありましたよね。調味料のコマーシャルだったかなあ。
 2つは別のコマーシャルだったとおもうのですが、いや、同じだったかも。とにかく、遠い記憶の中に『谷茶前節』が糸満と結びついて記憶に残っているのですよ。実際は糸満ではなく谷茶だということは、今はわかっていますけれど。
 とにかく、私以外の県外出身者のみなさんにも、曲名は知らなくてもなんとなくこの曲を知っているという人がきっと大勢いらっしゃる。

 その「夫婦別会計」の話。夫が獲ってきた魚を、妻が購入し、それを市場へ持って行って売る。なるほど、別会計のようにも見えます。
 実際は普通の家庭とそれほど変わりないけれど、商才に長ける糸満の女性は、沖縄で「ワタクサー」と呼ばれる「へそくり」(と書くと少々生々しいのですが)はしっかりと貯めていて、いざというときにはお金に困らないようにしている。という話を聞きました。

 『谷茶前節』の歌詞に、「夫は魚を捕り、妻は頭に乗せて売る」とあります。「イユグヮーコーミチョーラニー(魚はいかがですか)」という売り声を聞いたことはありませんけれど、1978年頃ですと、那覇の農連市場の近くでタライに魚をいれて売っている人を見ることがありました。

 そんな情景と「谷茶前」を組み合わせて、昔、魚を売って歩いていた糸満のたくましい女性を想像しています。