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タイラク(八重山)       
 笛だけがメロディーを奏でる民俗芸能は、少なくありません。よく知られた芸能に「獅子」があります。「獅子舞」のことではありあますが、そうかくと、唐草模様の獅子舞を思い浮かべてしまいますね。沖縄の獅子は、毛が生えています。

 手元に『第三回黒島の芸能祭り』(2002年2月17日)のパンフレットがあります。その解説を見てみます。
 タイラクは、ユニークな民俗芸能の極致であり、とにかく面白い。その語源は、太平楽か、はたまたターファークーの転訛か、定かでない。いずれにせよ、装束や小道具、仕草などからすると南方言(ママ、系?)又は中国系の芸能を原点としているのではないかと推測される。
 タイラクは、保里村の持ち芸で、東筋村の獅子棒と宮里・仲本村の獅子舞の三点で一連の芸能を構成している。タイラクの道ジュネーで道を清め、シーシ棒の演者の発する奇声で山奥から獅子を村におびき寄せ、村々の邪気を払い、村人の健康祈願、豊穣予祝を行う芸能だとされている。
 「道ジュネー」とは、列を作って道を練り歩くこと。シーシ棒は「獅子棒」のことです。「獅子棒」については、また別の機会に書こうと思っています。

 この「タイラク」は、私が初めて三線に触れた頃、先輩から教えていただいた芸能でした。当時、「三線を弾くサークル」に入部したつもりだったのに、歌を歌わないといけないと知って驚き、パーランクーを持って踊らなければいけないことを知ってまた驚いたものです。

 パーランクーとは、片面だけに皮をはった小さな太鼓。タンバリンに近いですけれど、棒でたたくことと、金属の円盤がついていない点がちがいます。エイサーをご存じの方でしたら、「平敷屋エイサー」で使われている、あるいは、子どもたちが踊るエイサーでよく見られる、あの小さな太鼓といえばわかっていただけるでしょう。

 さて、「タイラク」は、このパーランクーをもって、二列縦隊で踊るのですが、エイサーとはかけ離れた動きです。
 腰をかがめて前進したと思ったら、突然足を止めて首を振り出す。次の瞬間、片足で飛び跳ねる。と思ったら、また前進。この間、終始パーランクーをたたき続けているのです。
 この、珍妙な所作をただただ繰り返し、隊列は徐々に前進していきます。

 さきほど、パーランクーといえば「平敷屋エイサー」と書きましたが、実はこの「タイラク」の衣装は、平敷屋エイサーに近いものです。
 昨今のエイサーが華美に流れていくのに対し、平敷屋エイサーは、昔ながらの形と衣装をかたくなに守っていると言われています。平敷屋エイサーのそれは「僧衣」をまとって踊っていると言われているそうですが、この「タイラク」も黒と白の大変シンプルな出で立ちです。
 ただ、違いもあります。頭にはカツラ=といっても、髪の毛がふさふさのカツラといういみではなくて、エイサーの滑稽な役どころ、チョンダラーなどと呼ぶ地域もあるようですが、その面々が頭にかぶっている東京タワーのような尖ったカツラです。(私は、「マーニ(クロツグ)」という植物から作ったカツラが、弾力があって動きがおもしろいと教わりました)さらには、付け髭(ひげ)、そして、着物の裾をはしょっています。
 このカツラをかぶり、髭(ひげ)をつけて踊るというのは、つまりは「笑わせる」ことを目的にした芸能であるということです。踊り手は真剣なのですけれど、真剣にやればやるほど、滑稽な味がでます。

2003,6