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にてぃぬさんあいてぃ(八重山)  
 与那国島の子守歌です。

 この歌を聴いたとき、やさしいメロディーのとりこになりました。
 与那国出身の友人に「これはいいですね」と言うと、
 「いいだろう。与那国には、いい歌がいっぱいある」
 と自慢されてしまいました。舞台で、島の生活を表す場面には最適です。
 私の記憶している歌詞と共通語訳を書きます。与那国の中でも、多少の差異があるかもしれませんが、ご了承ください。

 にてぃぬさんあいてぃぬ たーりん (北のさんあいの木の下)
 うちぬふらや ひびだんぎかぎてぃ (牛の鞍を 山羊にかけて)
 んまぬふらや うちんぎかぎてぃ (馬の鞍を 牛にかけて)
 かしんたらぬ ぬーてぃんたらぬりゃ (縦糸も足りない 何もかも足りない)
 あみや ふいひんな たんでたんで (雨よ 降ってくれるな お願いだから)

 みたぬとぅてぃとぅる でぃぶん (鶏の時を告げる頃)
 あさちゆふみ どぅちゆかみ (朝露を踏み、夕方の露をかぶり)
 てぃんぬくい うすぬくいんでぃ (天の声 御主の声といって)
 いてぃんならぬ んにゆんならぬりゃ (生きることもできない 死ぬこともできない)
 あみや ふいひんな たんでたんで (雨よ 降ってくれるな お願いだから)


 この歌を知っている人は、少ないでしょう。そこで、今回は、声楽譜を書いてみました。
 子守歌ですので、三線伴奏はありません。が、このページをご覧のみなさんには、工工四の文字で表すのが一番わかりやすいと思いましたので、このような表記にしてみました。細かな節回しは書けていません。また、「○」一つが「半拍」と考える方がしっくりくると思います。
 これを見て歌を覚えようとは思わずに、「こんな歌なんだなー」と思ってください。

てぃ さん あい てぃ ーー
上中
りん
だん てぃ
ちん てぃ
てぃ りゃ
たん たん

 生活苦を歌ったものが、子守歌になっているんですね。久部良バリや人升田(とぅんぐだ)の伝説とともに、離島の生活の苦しさを想わずにはいられません。
 ですが、とても美しいメロディーで、どんなに苦しい生活の中でも、子どもを愛する心は変わらないんだろうなあと想像できます。

 この歌を聴いて、八重山には「工工四」になっていないすばらしい曲がたくさんあるんだなあと実感したものです。