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本部ナークニー(沖縄)       
 三味線店にポスターが貼ってありました。第10回「ナークニー・トゥバラーマ・トーガニアヤグ大会」と書かれています。
 「沖縄、八重山、宮古の代表曲の大会ですか」
 「そう。優勝を決めるんだけど、審査がむずかしいだろうね」
 話を聞きますと、「ナークニーの優勝」「トゥバラーマの優勝」「トーガニアヤグの優勝」と3人決めるわけではないのだそうです。出場者は、どれか一曲を歌い(予選の段階でだれがどの曲を歌うかはわかっているそうです)、審査員は全員の中から優勝者を決める。
 「ということは、3番の人のトゥバラーマよりも、5番のナークニーがうまい。というような決め方?違う曲を比較するのは、むずかしいでしょうね」
 「点数をつけているらしいけれど、むずかしいだろうなあ」
 いわゆる「のど自慢」では、出場者みんなが好きな曲を歌うわけですから、別の曲だから比較できないってことはないんですよね。それに、会場のお客さんも同じ曲をずっと聞かされるよりは、たとえ3曲だけであっても違う曲が聞けるのはうれしいでしょう。

 本部(もとぶ)は、本当に美しいところです。子どもたちがのびのびと遊ぶことができる自然がたくさんあります。みかん畑があるので、クワガタがとれます。森にはコノハチョウ(とっちゃだめです)、オオゴマダラ、フタオチョウなどのめずらしい蝶がいっぱい。道ばたにモウセンゴケという食虫植物が自生しているのも見ました。水が豊富で、手長エビ(タナガー)やグッピーがいる水路があちらこちらにあります。沖縄観光に訪れたみなさんが、この町を通り過ぎて水族館へ行ってしまうのがもったいないと思います。

 今歌われている「本部ナークニー」は、山里ゆき(ゆき子)さんらの、商業目的で録音された歌を真似たものです。山里さんも本部のご出身だそうですから、その歌ももちろん本物なのですが、本部の人に聞くと、「昔は、もっと違う歌い方もあった」のだそうです。とくに、男性と女性では歌い方がちがっていたとか。もしかすると「揚出し」という、歌の出だしを高い音から始める歌い方と、普通に出す方とがあった、ということかもしれませんが、確認はできていません。今思えば、本部で2年間暮らしましたが、本部の人が歌う本部ナークニーを聞いたことはありませんでした。

 「渡久地からぬぶてぃ 花ぬむとぅ辺名地 遊び健堅とぅ 恋し本部」
 渡久地、辺名地、健堅は本部町の地名ですが、なぜ最後に「本部」と全体を指す言葉になっているのか。これは、「崎本部(さきもとぶ=健堅の南側)」のことだと、本部町の人が説明してくれました。本部では、崎本部をたんに「もとぶ」と呼ぶことがあったのでしょうか。
 もう一つ、「遊び健堅とぅ」を「遊び健堅に」と歌うのが正しい。と言う話も聞きました。
 本物の歌を歌いたいと考える民謡ファンのみなさんには、このように部分的な違いが出てくるのは迷惑な話でしょう。でも、私はこういう「違い」があることが自然だと思います。無理に統一しなくても、違いを楽しもうと思えば気が楽になります。

2003,6