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真謝節(八重山)       
 『真謝井戸(まじゃんがー)』と、私は呼んでいるんですけれど、八重山民謡の工工四やCDでは『真謝節』と書いて「まじゃぶし」あるいは「まじゃんぶし」と呼ぶのが普通らしい。沖縄民謡では『スンドースリ節』と書くこともあるようです。囃子からきているようです。

白保てぃる島や 果報ぬ島やりば 真謝井戸(まじゃんがー)ばくさでぃ うやき前なし

 歌詞にもありますように、石垣島白保の歌です。
 この歌詞だけを見ますと、この曲を『白保節』と呼びたくなりますが、歌の後半は「真謝井戸」の話になっていまして、やっぱり『真謝節』なんです。

 さて、八重山の民謡について調べるときに、たびたびお世話になっている書籍。『八重山民謡誌』(喜舎場永c著 沖縄タイムス社)を見ましても、『真謝節』はありません。この本は、曲を五十音順ではなくて、地域ごとにならべてありますので、『白保節』のあたりを見てますと・・・ありました。『シンダスリ節』と書かれています。
 著者は、『白保節』の作者の末裔にあたる人から、「シンダスリ」は「チィンダスリ」の転訛であると教えられたそうです。「チィンダスリ」は、著者には申し訳ありませんが「ツィンダスリ」と書く方がわかりやすそうです。それはともかく、その解説の続きを転記してみますと、

 「チィンダーサ」は可愛いという意味で「スリ」は「気が生きかえる」すなわち、可愛い乙女をみて気がよみがえるの意。

 おそらく、「スリ」の部分は「サースリ」の誤植(脱字?)だと思うのです。その方が著者の言いたいことがわかります。ですが、「スリ(サースリ)」は、かけ声程度に考えた方が自然ですよねえ。どうなんでしょうか。

 さて、舞踊に目を向けますと、八重芸では、『真謝井戸(まじゃんがー)』とうい名前で踊っています。井戸の水をくみ上げるような所作があったりして、なかなか楽しい。
 ん?待てよ。真謝井戸は「下り井戸(うりかー)」と言って、人が階段を下りていって水を汲んで上がってくる形なんです。つるべを落して、引っ張り上げる方法ではないんです。うーん。まあ、踊りというのはわかりやすいってことも重要ですので、ご容赦願いましょう。

 琉舞の舞台ですと、『馬山川(ばざんがー)』という舞踊が有名ですね。この中で『スンドースリ節』が使われているんです。舞踊の名前「ばざんがー」というのは、まちがいなく『真謝井戸(まじゃんがー)』が変化したものでしょう。本部出身のある人は「地元では、ガジャンガーと呼んでいた」と言っていました。確かに、井戸(カー)には、蚊(ガジャン)が多いとは思いますが。
 このように、いろいろな呼び方のある曲というのは、それだけ大衆に受け入れられたということなんでしょう。沖縄芝居と共に広まったのかもしれません。
 軽快なリズムと楽しい囃子。八重山から沖縄まで、どこで歌っても喜ばれる歌ですね。

 「真謝井戸」は、白保へ行けば見ることができます。友人の話ですと、島の人は「まじゃんがー」と呼ばずに「まじゃいど」と呼ぶそうです。白保へ行ったら、「まじゃいど」の前で『真謝節』を歌ってみてはいかがでしょうか。

2004,6