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黒島口説(八重山)      
 沖縄では「くるしまくどぅち」となりますが、八重山では「くるしまくどぅき」と言う方が普通だと信じています。
 名前の通り、黒島の歌と踊りですが、実際は沖縄全県的に有名になっていて、沖縄には沖縄の「黒島口説」があり、石垣にも「黒島口説」がある。黒島では、集落によって少し違う踊りになっていたりと、バリエーションは数限りないと言ってよいでしょう。

 大変有名で、大変楽しい踊りです。この曲の地方をやるのは、さぞ大変だろう。と思われるでしょうけれど、実際にやってみると楽なんです。
 理由は簡単。歌う部分が少ない。半分以上は、踊り手が歌ってくれるのです。
 七五調の「口説」の部分と、踊り手が歌う「囃子」の部分とがあるわけですが、その囃子の部分の方が長いのです。三線を弾くだけなら、簡単なこと。
 と、甘く見たのが大間違いでした。

 たしか、余興で演奏することになって、そのための練習をしていたときだと思います。一緒に地方をやっていた先輩から何度も何度も同じ注意をされました。
 「速い!」
 これです。速くなるのです。

 お客さんの立場で『黒島口説』を見ていると、「ゆったりとした口説」と「軽快な囃子」の対比がおもしろい。と感想文を書きたくなるのですが、どっこいそれが大間違いでした。
 「口説」と「囃子」のスピードは、ほとんど同じ程度なのです。
 ところが、「囃子」の部分では、三線の演奏が「早弾き」になります。あのリズムになるわけです。スピードそのものはあまり変わりないのに、軽快に聞こえ、速くなったような気がするわけです。
 私は、それを「観客」の感覚で、速く弾いてしまうのです。速くなると、踊り手はたまりません。駆け足しながら歌うような状態になりますから(正しい速さでもそうですけれど)、息が切れてしまって歌うどころではなくなるのです。
 慣れた地方なら、踊り手の様子を見て、速すぎるのか適当かを感じることができるのです。当時の私はそれができませんでした。もちろん「きちんと踊り手を見て演奏する」という常識は知っていましたし、その通りにしていたのですが、見ているだけで、踊り手の悲鳴を感じることができなかったのです。

 結局、先輩から注意され続けて余興本番。「遅く、遅く・・・」と心の中でつぶやきながら演奏しましたけれど、実際は速くなっていたのでしょうね。先輩から「今日はよかった」なんて、誉めてもらった記憶はありませんので。