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じんじん(沖縄)          
じんじん じんじん 壷屋ぬ水くゎてぃ うてぃりよー じんじん さがりよー じんじん
じんじん じんじん 酒屋ぬ水くゎてぃ うてぃりよー じんじん さがりよー じんじん 

 「じんじん」とは、蛍のことです。
 つい先日まで、蛍を方言で「じんじん」と言うのだと信じていたのですけれど、いえ、正しいことは正しいのですが、「じんじん」は幼児語だそうで、大人は「じんじなー」と呼ぶとか。方言はむずかしいです。
 「うてぃりよー」は「落ちろ」、「さがりよー」は「下がれ(下りろ)」という意味でしょう。
 私が記憶している『じんじん』は、このような歌詞でした。

 『沖縄童謡集(島袋全發)』(平凡社東洋文庫)には、「蛍」の唄が「其の一〜其の三」まで3つ載っていますが、どれも違う歌詞でした。
 似ているのは、其の一です。(一部現代仮名遣いに改めました)

ぢんぢん ぢんぢん さんしくぬ山往(ん)ち 落てて水喰(く)えよう

 解説には、(一部抜粋)

「壷屋の水くわて落てれよー、ぢんぢん」という所もあり、首里では、さすがに泡盛製造の本場の三箇(さんか)(赤田、崎山、鳥小堀)を控えているだけに、「酒屋の水くわて・・・」、田舎では「製糖小屋(さたや)の水くわて・・・」とうたう所が多く、与勝半島では「ぢーなーぢーなー酒屋の水くわて、けー落てれ」とうたう。

 と書かれています。私が記憶していた歌は、ハイブリッドのようですね。

 沖縄の音楽が教育に取り入れられてしかるべきである。特に、沖縄県内の幼稚園、小学校、中学校ならば、当然取り組むべきだ。
 そんな意識は、今から25年前の教職員の間にもあったはずなのですが、実践できるようになるまでには、ずいぶん時間がかかったようです。ある意味では、現代もまだ試行錯誤のまっただ中と言ってよいでしょう。
 そんな中で、比較的早くから取り組めたのは、幼稚園や保育所ではないでしょうか。教科書に縛られることのない分、指導者の裁量で地域の音楽を取り入れやすかっただろうと思うのです。とすれば『じんじん』のような童謡は、早い時期から用いられていたに違いありません。
 教育現場での取り組みが先か、大学や教育センターなどの研究機関が先か、それはよくわかりませんが、私が学生のころには、すでに「郷土の音楽」を重視しようと考える大学教授がいましたし、大学の授業の中でそのような講義も聴くことができました。この『じんじん』も、講義の中で教えてもらった歌です。記憶している歌詞が「ハイブリッド」なのは、教育現場用に合成されたものだったのかもしれません。

 その講義は、音楽教育についてだったと思います。講義の中で、しかも教育の分野で、「沖縄の音楽」が登場するということに、大きな期待を寄せていたのですが、内容は残念ながら期待はずれでした。
 沖縄の音楽には違いないのですけれど、それは「西洋楽器で演奏する沖縄音楽」だったり「沖縄音楽を合唱曲にアレンジする」ことだったり「宮良長包の沖縄音楽」だったりしたわけです。宮良長包氏の音楽はすばらしいと思いますが、その時は「民謡」が出てくる物とばかり思っていたのに、結局、『じんじん』をはじめとして、取り上げられる民謡も童謡も、そして宮良長包氏の音楽も、ピアノ伴奏でみんなで歌うというものだったので、がっかりしたわけです。

 今思えば、沖縄音楽を取り入れようとしたことだけでも先進的だったんですよね。それに、この『じんじん』、大学の講義では方言のままで合唱しました。当時はまだ、方言を「不正語」呼ばわりする教員の多かった時代です。方言で合唱をしようと考えたというだけでも、進んだ取り組みだったのです。
 そんなことには気づかず、

 「おいおい、沖縄の音楽やるなら、三線だろう。なんでピアノなんだよー」

 と、頬をふくらませていた自分は、若かったんですねえ。

2004,3