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ダートゥーダー(八重山)     
 ダートゥダー、あるいは、ダードゥーダーなどと紹介されていることもあります。
 小浜島の民俗芸能で、4人が黒い面を被って登場し、歌声に合わせていろいろな所作を見せますが、歌詞も、その所作の意味もよくわかりません。いわゆる「南ぬ島(ふぇーぬしま)」系の踊りだとされているようです。
 小浜島の結願祭で演じられていた芸能ですが、1926年に「福禄寿」に取って代わられ、長らく途絶えたままになっていたそうです。1974年、八重芸がそれを取材し、発表会の舞台で復活させました。本家小浜島でも2001年の結願祭に75年ぶりのダートゥーダーが演じられたと新聞で報道されました。

 ダートゥーダーの面は木でできています。目の部分は、直径3cmほどでしょうか。小さな穴が開いているだけ。極めて狭い視野の中で、4人の動作を完璧にシンクロさせるには、想像を絶する「修練」が必要なのです。
 八重芸では、1974年から今までに、何度もダートゥーダーを演じていますが、演じ手にはそのたびに過酷な練習が科せられます。私自身は演じたことがありませんが、その練習を横目で見ながら、自分がそこにいなくてよかったと思ったものでした。

 宮古島で友人二人と話をしていると、話題はダートゥーダーへ。私の両隣に座っているこの二人は、どちらもダートゥーダーの経験者でした。
 「あの面って、みんな同じに見えるけど、違うんでしょ?」
 「違うよ。裏に番号が書いてあるよ」
 「でも、聞いた話じゃあ、番号を見ないでも、表を見ただけで自分の面がわかるようになるんだってね」
 「そうそう、わかるわかる。最初は裏を見て確かめるけど、練習しているうちに、表でわかるようになるね」
 「うん。匂いでもわかるよ」
 「に、匂い!」
 「わかるよー。あいつの面だけは被りたくないとか。ね」
 「そうだったよねえ」
 「他の人の面は、被りにくいの?」
 「そう。それもあるよ。顔に合わないっていうか」
 「え?最初からそれぞれの顔に合わせて作ったわけじゃないよね。昔からある面をかぶってるでしょ」
 「うん。でもね、自分のが一番合う」
 「それ、顔が面に合ってきてるとか?」
 「かもしれない」
 「恐ろしい・・・・」
 「言われてみると、おもしろいなあ」
 「ちがうよ。恐ろしいって言ったの。それに、あの面を被って四人の動きが合うっていうのが信じられないよ。やったことのない私には」

 いい具合に酔いがまわってきたようです。

 「あれを合わせるには、呼吸よ。呼吸があわないとだめ」
 「そうそう。このときには、相手は見えないからね。こうしたときに音がばらついたら失敗よ」
 「練習を積むと、息を吸ったり吐いたりするタイミングまで同じになる」
 「見えなくても、なんとなくわかるもんね」

 身振り手振りで解説してくれる二人の話を、私は右を向いたり左を向いたりしながら聞いていました。

 「本当に、あんたたちは偉かったよね。よく八重芸やめなかったね」
 「なんで?」
 「やってて、いやになったでしょう。あんなに辛い練習して」
 「いや、おもしろいよ」
 「おもしろい?」
 「他の人にはさせたくなかった」
 「うそ!私はやらされなくてよかったって思っているけど」
 「ああ、かわいそうに。あんなにおもしろいのは、ないよ」

 芸能って、やってみないとわからないんでしょうねえ。

○ダートゥーダーの写真を見たいかたは、インターネットで「ダートゥーダー」をキーワードにして検索してみてください。

2003,7