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網張ぬみだがーまユンタ(八重山) 
 カニを見るなら、干潮時でしょう。

 石垣島の「新川」「石垣」「大川」「登野城」の四つの字(あざ)を、四箇(しか)、あるいは四箇字(しかあざ)と呼ぶことがあります。この言葉は「都会」とか「街」といった意味も持っています。
 離島桟橋のあたりから、新川方向へ車を走らせます。新川を抜け、「川平」と書かれた方向へ向きを変えますと、先ほどまで住宅が密集していたのがうそのように、牧歌的な景色が広がってくるはずです。左手に海。竹富や小浜が見えるかもしれません。
 道路はちょっとした森のような木々の中を過ぎます。少し走ると、名蔵湾が。そこに架かる橋が「名蔵小橋」と「名蔵大橋」です。「名蔵大橋」の方を渡ってすぐ右に、数台分の駐車スペースがあります。「網張」の由来を書いた看板が出迎えてくれるはずです。

 車を停めたら、今走ってきた道を渡って、海側に。そこから、橋の下へ下りられるようになっているはずです。少々足下が悪いので、気を付けていただきたい。
 下りたら、橋の下をくぐって、川沿いに歩いてみましょう。ここまでの経路を頭の中で想像している人には、「だったら、車を停めたところから、すぐに川へ下りた方が近いじゃないの」と思われたでしょう。でも、そこからは下りにくいですよ。

 とにかく、川沿いを歩きましょう。干潮時は、広い干潟が広がっています。マングローブに白い砂。足下の無数の小さな穴は、カニの穴でしょう。

 歩いていても、カニが見つかりませんか?でしたら、足下を見るのではなくて、20mほど先を見ながら歩いてみてください。あなたが動くたびに、小さなつぶつぶがざわざわと動いているのが見えるはずです。それがカニです。たくさんのカニがいるのですけれど、あなたが近づく前に、穴の中に潜っているのです。
 どうしても、近くで見たい?でしたら、立ち止まって、しゃがんで、じっと三分ほど待ってみてください。足下の穴の中に隠れていたカニたちが、そっと出てくるはずです。

 カニの種類はよくわかりません。でも、片方のハサミが大きいそれは、シオマネキと呼ばれるカニの仲間でしょう。正確には「○○シオマネキ」という長い名前があるかもしれませんし、同じように見えているカニも、少し違った種類かもしれませんが。
 そいつは、大きい方の爪を上下に動かして、まるで「おいでおいで」をしているよう、いえ、「おいでおいで」は、手の平を下に向けて手招きしているイメージですので、それよりも「カモーン、こっちへ来なよ!」と表現する方が近いかとも思いますが、とにかくそんな動きが「三線を弾いている」ように見えるのだそうです。

 網張ぬみだがーまユンタでは、「ミダガーマ」というカニ(=コメツキガニ=八重山古謡より)の生まれ年のお祝いで、「ムミンピキカン」(=タイワンシオマネキ=八重山古謡より)が三線を担当すると歌われています。
 このほか、いろいろなカニの動きや生態から、そのカニにふさわしい役割を当ててあるのですが、カニをよく知らない私にはピンときません。でも、「○○カンや」(カン=カニ)「○○にんじゅハーイヘー」(にんじゅ=人数=役割)という言葉の繰り返しがおもしろくて、ついつい最後まで歌ってしまう楽しい歌です。

 網張でカニをみつけたら、「おいおい、きみは何の役目?」と尋ねてみるのもおもしろそうです。