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東里真中(宮古)      
 「琉球列島島うた紀行第二集」(仲宗根幸一編著)では、八重山の「あがろうざ節」との関係を「異名同曲」としながら、喜舎場永c氏の言う「トーガニスーザ」との交換説には触れていません。そのかわり、下のような記述がされています。

 「大宜味信智が作歌作曲した」と記述している。しかし、八重山には「あがろうざユンタ」という子守歌のユンタがあり、おそらく、大宜味信智はその子守歌のユンタを改作曲したのではないだろうか。(編曲、洗練化を)ちょうど「鷲ぬ鳥ユンタ」を、「鷲ぬ鳥節」に節歌化したように。
 すると、宮古の「東里真中」(別名「東だき真中」)と八重山の「あがろうざユンタ」がどう関連しているかが究明の課題となろう。

 著名な研究者でいらっしゃいますし、冷静な判断をしておられると思います。
 ただ、「ユンタから節歌」という一方通行しか考えておられないことと、「子守歌のユンタ」という点が少し気になります。気になるからといって、氏の判断が間違っているということにはならないのですが。
 このような難しい話は、研究者に任せます。

 「あがズざとぅ んなかーんーよー」
 最初のフレーズから、難しいです。「ズ」は、宮古でよく出てくる「る」のような「い」のような「ず」のような音。同じ音が宮古民謡にはよく出てきます。
 もう一つが「ん」です。「んなかんよ」の先の「ん」は「m」です。後の「ん」は「n」です。つまり、

「m」=上下の唇を合わせて「ん」=「がんばれ」の「ん」
「n」=唇は合わせずに舌を上あごにつけて「ん」=「かんな」の「ん」

これを区別しているのです。

 下地勇さんのCDを聞いていると、このあたりの発音が随所にでてきます。ほとんど聞き取れないのですけれど、一つだけ「三線」の発音「さんしん」の最初の「ん」が「m」だったことに気づきました。「さむしん」と聞こえるかもしれませんが、こういうところもちゃんと宮古なところが嬉しいです。

 民謡はおもしろいです。たとえ、どこからか流れてきたか、もらってきたかした歌であっても、その土地で歌い継がれるうちに、確実にその土地の歌に変化していくのです。
 「東里真中」は、まちがいなく宮古民謡ですし、「あがろうざ節」は、まぎれもない八重山民謡です。歌を歌っていると、「発祥」などというものにあまり意味を感じなくなります。研究者にとっては大切なことなのでしょうけれど。