三線音楽について、いろいろ書いてあります。役に立つかどうかはわかりません。






GO MOUTH HERE MOUTH 声が高いから調弦を低く?
 沖縄民謡では、女性の方が男性よりも低い調弦で歌うことが多いようです。

男女同じ歌を同じキーで歌っているつもりでも、
女性は、男性よりも一オクターブ高い声を出しているんです。
だから、男性と同じキーでは高音が辛くなる。女性が低めの調弦で歌うのはこのためです。

 うーん。なんだかわかったようなわからないような。やっぱりわからん。
 そこで、もう少し詳しく説明をさせていただきます。
 またまた、言い訳を先に書きますが、私は声楽を学んだり音楽理論を勉強しているわけではありませんので、難しいことはわかりません。おおよそ、このような理解でいいかな、という程度の説明ですので、詳しく知りたいかたは、専門的な本を読んでください。どんな本がいいかですって?すみません。わかりません。とりあえず、スタートです。

 チューニングメーター(チューナー)で三線の調弦をします。
 女弦を「C4」に合わせました。「4C」と表示されるかもしれません。
 ちょっと説明です。
 「C」は、「ド」だと思えばいいですよね。(本当は「ハ」。でも気にしません)
 じゃあ「4C」の「4」は?
 同じドでも、「ドレミファソラシドレミファソラシドレミファ・・・」と、何度も出てきます。低い「ド」もあれば、高いのもある。そこで、どの「ド」なのかわかるように、「4C」というふうに数字をつけてあるんです。ピアノの鍵盤でいいますと、真ん中あたりの「ド」が「4C」だそうです。
 「ははあん。じゃあ、高い方の「ド」は「5C」で、逆に低い方は「3C」だね」
 大正解!その通りです。一オクターブ上がる毎に、数字が一つ増えます。図にしてみますね。

←音が低い 音が高い→
ファ ファ
2A 2B 3C 3D 3E 3F 3G 3A 3B 4C 4D 4E 4F 4G 4A 4B 5C 5D 5E

 伴奏する楽器によって、「4C」などの数字が変わるかもしれません。たとえば、笛の音をチューニングメーターで確認してみますと、〈合〉の音は「5C」となります。つまり、三線と笛を両方演奏する人には、三線の「3C」と笛の「5C」が同じ高さということになります。
 ここでは、声のお話ですので、このまま先に進みましょう。

 次に、人間の歌声を考えます。個人差はありますが、男女の声を仮に、こうしましょう。

ファ ファ
2A 2B 3C 3D 3E 3F 3G 3A 3B 4C 4D 4E 4F 4G 4A 4B 5C 5D 5E
男性の声の幅
女性の声の幅

 もう少し幅が広いかもしれません。それに、個人差が大きいはずです。まあ、説明用ですので、こうしておいてください。
 男性は、「4D」を越えたあたりから、音が高すぎて苦しくなります。
 女性は、「4D」ならまだまだ楽。それでも、「5C」までくると辛いですよね。
 つまり、女性の方が男性よりも声が高いわけですよね。

 ところが、歌の中で声を高くしていくと、女性の方が先に「く、く、くるしい〜」となります。女性の方が声が高いはずなのに、なぜ先に苦しくなるのか?

 三線に登場してもらいましょう。
 三線を「テン」と鳴らして、その音を「アー」と声に出します。

三線(C)
男性
2A 2B 3C 3D 3E 3F 3G 3A 3B 4C 4D 4E 4F 4G
男性の声の幅 苦しい→
女性
3A 3B 4C 4D 4E 4F 4G 4A 4B 5C 5D 5E 5F 5G
女性の声の幅 苦しい→

 上の表を見ながら説明を読んでください。

 たとえば、三線で〈合〉を「テン」と鳴らしますと、男性が「アー」と出せば「3C」です。ところが、おなじ音を聞いている女性が「アー」と出すと「4C」なのです。男性と女性、二人同時に同じ音の高さで「アー」と声を出しているつもりでも、女性の方が一オクターブ高いのです。
 なぜ、女性が一オクターブ高い「4C」なのかはよくわかりません。男性(変声後)と女性は発声するための器官の構造(大きさ)の違いで、出しやすい音の高さが違っています。おそらく、人間の音の感覚というのは相対的なもので、聞いた音に一番近いと思った音(声)を出すようになっているのでしょう。それで、同じ〈合〉(ド)を聞いても、男性は「3C」、女性は「4C」を出してしまうのでしょうね。
 これが、「女性は男性よりも一オクターブ高い声を出している」という意味です。

 音を高くしましょう。
 〈老〉を鳴らすと、【男性=3E】、【女性=4E】です。表を見ますと、男女とも、「声の幅」の中に入っていますので、楽に声が出せるはずです。

 さらに高くします。
 〈工〉を鳴らすと、【男性=4C】、【女性=5C】となります。表では、男性は「声の幅」に入っていますが、女性は「声の幅」からはみ出してしまいました。この時点で、男性は楽に声が出せるのに、女性は苦しくなっているわけです。
 だから、「女性は低めの調弦で歌う」というわけです。
 この表をそのまま当てはめれば、もし男性が調弦を「C」にしてちょうどよい高さの歌なら、女性は「A」あたりがいいということです。

 ここの記事は「女性の方が声が高いはずなのに高い調弦で歌わない理由」をたいへんおおざっぱに説明したものであり、基準を示しているのではありません。人の声の高さは、個人差があります。たとえば、女性だけど男性と同じ声の高さの人。男性だけど高い人。声の幅の広い人、狭い人。千差万別です。ご自身の声の幅や音域が違うからといって、歌を諦める必要はありませんし、異常でも何でもありません。むしろ、人と違う方が個性的ですばらしいと思えることの方が多いでしょう。




GO MOUTH HERE MOUTH 正確なチンダミはつまらない
 古典や民謡の発表会へ行きますと、最初の演目では、たいてい大勢の人が舞台に板付き(幕が上がったときには、すでに舞台上に人がいる状態)で三線を構えています。
 三線の打ち出しとともに、緞帳が上がり始めます。このとき、必ずといってよいほど、こう感じるのです。

 「もうちょっと、ちゃんと調弦すればいいのになあ」

 またまた身内の話で恐縮です。
 「八重芸」の発表会では、必ず「チンダミ係」が調弦をします。他の団体の場合は、おそらく「自分の三線は自分で調弦」だと思います。たとえば、「今日のかぎやで風は、Cです」とかなんとか言われたら、みんな自分でCに合わせる。なかには、隣の人の三線を聞いてそれに合わせる。なんて感じではないでしょうか。
 この方法では、調弦にばらつきが出るのは避けられません。ですから、緞帳が上がったときに「もうちょっとちゃんと・・・」となるわけです。

 チンダミ係がいる八重芸は、発表会のとき、一度すべての三線を一つの部屋に並べます。そして、すべての三線をチンダミ係(2名程度)が調弦します。この方法ですと、ほぼ完璧に合わせることができます。
 それでも、部屋から舞台へ三線を運び、出演者に三線を手渡し、緞帳が上がる前にもう一度調弦を確認してみると、必ずいくつかのずれが発見されます。これは、チンダミ係のミスではなく、運ぶ途中で音がずれたり、構え方の違いで音が変わったり、そのほか様々な要因がからんでいるものと思われます。チンダミ係もそのことを予測していますので、緞帳が上がる前に確認し、その場でもう一度合わせるわけです。
 これだけやれば、調弦は完璧。いいえ、これだけやっても「ほぼ」完璧にしかなりません。やっぱりどこかに甘さが残っている。
 今までに、2度だけ「本当に」完璧な調弦だと、私が感じたことがありました。このときは、調弦の確認のために、開放弦を「テン」とやると、音が伸びるのではなくて、空気に吸い込まれていくような感じでした。「さぞかし、すばらしい舞台になったろう」ですって?いいえ、調弦と舞台のすばらしさとは別ですし、このときの音は、はっきりいって「おもしろくない音」だったのです。満足しているのはチンダミ係だけ。
 それでも、勘所を押さえれば人それぞれ微妙な(微妙といえないくらいの?)違いが出ますし、緞帳が上がり、歌が始まるころには、開放弦でもどこかでズレが生じて、チンダミが甘くなる。その甘さがちゃんと「おもしろい」音を作ってくれるようです。

 『コーラス効果』という言葉を、かの「笛名人」が教えてくれました。
 同一の楽器を演奏するとき、単体で演奏するのと、複数の楽器で演奏するのとでは、複数の方が豪華な、あるいは明るい感じがします。
 同じ楽器で、同じメロディーを演奏すれば、楽器が3つになろうと5つになろうと、音は一つに聞こえるだけ。せいぜい音量が大きくなるだけだろう。と素人の私は頭の中で考えるわけですが、実際は違います。人間が演奏する楽器ですから、同じ音を出しているつもりでも微妙な違いがある。その違いが合わさって、音に「味」を付けてくれる。それが『コーラス効果』だそうです。
 なるほど、チンダミを正確にやりすぎると「おもしろくない音」になり、少しずれ始めた頃に「おもしろい音」になるのは、それだったのですね。

よーし。じゃあ、明日からチンダミに気をつかわずに、少しくらいずれていてもコーラス効果ねらいで演奏しようっと」

 という考えは、まちがいです。コーラス効果が期待できるのは、極めて小さなズレ。聞いていて、明らかに音が違うとわかるような調弦では、コーラス効果どころか、まともな歌を歌うこともできません。やっぱり正確に合わせるよう、努力しましょう。